生年月日 平成19年6月14日 7歳10か月 女性
* 矯正治療説明書の有効期限は、2ヶ月間となります。
(症状、患者さんの主訴について)
①下顎前歯4本が、重なっている。特に、下顎 左右側 側切歯が斜めに生えています。
診断名は、 「下顎前歯部の叢生(そうせい)」です。
(その他の記載事項)
①態癖があります。→「うつ伏せ寝」があります。
②ピーナッツアレルギー
③普段は、問題ありませんが、話したり、歌ったりする時に、下顎が「受け口」になる事があります。
④お母さんが、「反対咬合」の時期がありましたが、自然に治癒しています。
(レントゲン所見)
①パノラマX-Pで、上顎左右側第二小臼歯(5番)が、先天性欠如の可能性があります。
半年ごとに、レントゲンを撮影して確認しましょう。(下の写真が、パノラマレントゲンです。)
②パノラマレントゲン像は、智歯はまだ形成されていませんが、上顎左右の第2小臼歯以外の他の永久歯は全て存在しています。智歯に関しては、将来 出来てくる場合が有り、智歯の生え方や智歯の深さによりますが、大学での抜歯紹介も必要な場合があります。
その時は、1本約15,000円必要になります。また、上顎の歯が、密集しており、上顎骨の劣成長(狭い成長)が考えられます。この事は、上顎骨劣成長→鼻腔狭窄→鼻閉→口呼吸習慣に至る傾向があります。
③手根骨レントゲンは、軟骨が骨端に存在するため、成長期にあります。そのため、歯列拡大矯正装置が使用できます。即ち、T4K,ビムラー装置、3DL、床矯正、ブラケット装置が使用できます。
(模型を見てみると)
■歯の大きさ
場所(部位) | 本人の歯幅径(mm) | 日本人の平均女性 | 差(+・-)mm |
---|---|---|---|
上顎中切歯 | 右側 9.1 左側 9.1 |
8.24mm | +0. 86◎ +0. 86◎ |
下顎中・側切歯 | (右側) 中切歯 5. 5 側切歯 6. 6 (左側) 中切歯 5. 8 側切歯 6. 3 |
5.19mm | (右側) +0. 31 +1. 41◎ (左側) +0. 61◎ +1. 11◎ |
(診断)
このことから、歯の大きさは、「◎」の部位5本が、平均値より0,5mm以上大きい歯になります。矯正装置を使用しても、歯が生える場所が確保できない場合又は、後戻り防止の意味で、将来 ディスキング(削合)が必要な場合があります。(ディスキングは、以下の図にあります。)
(歯が大きい場合は、ディスキングという後戻り防止のため処置を行う事があります。
(治療期間と治療装置について)
大きな流れは、5Step(段階)になります。
1.軟組織機能の使い方の改善と、鼻呼吸の習慣付け
2.場所の確保
3.全ての永久歯が生えるのを待つ時間
4.歯を並べる
5.後戻り防止
1.軟組織機能の使い方の改善と、鼻呼吸の習慣付け
軟組織機能の使い方の改善と、鼻呼吸の習慣付けを致します。
7~8歳前後の成長期のお子さんの不正咬合の主な原因は、軟組織(舌と唇)の機能(使い方)のバランスが崩れた場合に起こります。また、鼻呼吸不全も重要な要因になります。西村歯科では、軟組織機能改善及び、鼻呼吸促進の習慣を付けて頂くために、ハナクリーンと矯正装置(T4K)で、鼻呼吸のトレーニングを行います。
この効果は、お子さんの無呼吸症候群の予防、歯列改善、歯肉炎、虫歯予防、矯正後の後戻り防止に効果があり、また、鼻呼吸は、お子さんの睡眠が深くなる事による睡眠時に分泌される成長ホルモンの働きを正常にし、疲労の回復にも効果があります。そして、将来の丈夫な大人の身体を作る鼻呼吸習慣がこの時期に身に付けられると、西村歯科では考えています。この機会を失うと、中々、鼻呼吸習慣を身に付ける機会、時間を作れないと思っていますので、特に大切な時期だと思っています。
2.場所の確保
永久歯が全て生える為の場所を確保致します。
上下顎の発育不足が考えられますので、上下顎骨の「発育を促す」装置が必要になります。最初に使用する矯正装置は、「床(しょう)矯正装置」です。この装置は、発育期のお子さんの歯並びを改善するために効果的に働きます。この期間は、基本的には、調整、装置の清掃のため、一ヶ月に一度の来院になります。
また、この時期は、色々な装置が使用できる時期でもあり、この事が、成長期の矯正の最大のメリット(利点)になります。
3.全ての永久歯が生えるのを待つ時間
永久歯が生える場所が確保された後は、歯の生えるのを待つ時期となります。
この時期は、比較的期間が長期になりますので、上下に3DL装置を使用し、永久歯の生える場所の確保をする事になります。
この期間は、2~3ヵ月に一度来院になります。(ここでは、むし歯になり易いか?診断し来院期間を決めていきます。歯ブラシが、しっかり出来ていれば、来院間隔は、長くなりますし、また逆に歯ブラシが不十分な時は、むし歯になりやすい為 来院間隔が短くなります。歯ブラシを、しっかりしましょう!歯科医院でも、歯ブラシ指導をしていく予定です。)
この間に、歯の位置異常がある場合は、ブラケット装置をセットし、毎月清掃と調整のため来院をします。
4.歯を並べる
全ての歯が生える12歳~15歳頃に、再評価を行います。この時点で、歯並びに問題が無ければ、ブラケット装置は装着しません。①と②の装置をしっかりする事が肝心になります。その効果は、本人のやる気と、装着時間、トレーニングの積極性に左右されますので、ブラケット装置を避けたいのであれば、①と②の時期をがんばりましょう。この事は、歯並びだけが綺麗になるばかりではなく、お子さんの健康的な発育、矯正終了後の後戻り防止にも効果があります。頑張りましょう!もし、①と②が、効果不十分な場合は、最終仕上げとして、ブラケット装置による最終仕上げをする事になります。この時期は、むし歯になりやすい為、毎月調整、清掃が必要になります。
5.後戻り防止
そして、最終的に歯が綺麗に並んだ後は、後戻り防止装置を装着致します。
装着後1~4ヶ月ごと来院になります。最後の後戻り防止の期間が長くなります。
矯正で、一番難しいのは、実は後戻り防止の対策なのです。
これは、年齢とともに歯並びが変化するからです。
*ここで、矯正の後戻りについてお話し致します。
無事 矯正が終了した場合でも、少し後戻りがするのは事実です。これは人間の老化現象があるように、人の体の「仕組(しくみ)」として、新陳代謝があるからです。10代には10代の歯並び、20代には20代の歯並びがあるように、年齢と共に、歯並びもそれにあった歯並びになってくるからです。これは避けられません。また、身体全体のバランスのとれたところに歯並びが並ぶように多少変化するからです。
そのため、多少 後戻りすることは避けられません。しかし、一生懸命 矯正した歯が元に戻るのは残念なことです。西村歯科では、できるだけその後戻りが少なくなるようにリテーナー(後戻り防止装置)をして頂きます。これにより多くても一割くらいの範囲内で後戻りになるようにできるのです。また、態癖、歯ぎしり、使い方によりリテナーは劣化(古く)なりますので、その時は、リテナーを作り変えることで対応が出来ます。
矯正終了後、後戻り装置使用の仕方について
最初の1年間は1日中、その後 家にいる時のみ1年間使用し、その後は夜のみ使用としていきます。装置に違和感がなくなれば、経過観察となります。また、この「後戻り」を最小限にするためには、「①軟組織機能の正常な使い方と、鼻呼吸」が有効な為、最初のT4Kトレーニングをしっかり行いましょう。
(注意点・重要 矯正治療の中断が必要な時)
A)とB)とC)の3つの事項があります。
A)11歳~16歳頃から思春期成長が始まり、身長が急に伸びる時期に合わせて、下顎骨が過成長する場合があります。この場合は、大学での外科矯正が必要になります。もし、大学での外科的矯正治療になる場合は、大学へのご紹介を致します。また、反対咬合は、18歳頃まで後戻りをし易い状態にあります。これは、口唇・舌を含めた口腔周囲の筋肉が中々改善しないためです。そのため、後戻りの経過観察が必要になります。)
*反対咬合の場合、遺伝的要因が2割、かかわっていると思われます。従って、大人になるまで放置する場合は、9割以上が手術になると思われます。これは、顔の形(骨格)がその様な反対咬合の顔貌になる為です。しかし、小さい頃より矯正する事により、その反対咬合になる発育の方向性を、変更できると考えています。また、仮に反対咬合になった場合でも、その反対咬合の量は少なくなります。特に、反対咬合の場合は、手術矯正になる場合がある事は、重要なポイントですので押さえておいて下さい。
B)歯の体質的又は、過去にバスケットボール等で前歯を打撲した場合などに、矯正により歯の根が短くなる傾向が発現する場合があります。この場合は、本人のためにも矯正治療を中止した方が良いと思います。その場合は、そこまでの歯並び矯正が無駄にならない様に後戻り防止の装置を装着する事になります。
C)歯科医院の指定日に、ご来院頂けなく、キャンセルを何回も繰り返す場合。又は、勝手に、治療装置を、装着したりしなかったりを繰り返す場合は、智歯の完成度により歯が動かなくなり、西村歯科での治療は不可能になり、大学への抜歯矯正に止(や)むを得(え)ず紹介する事になります。つまり、保護者の方と、西村歯科医院の協働治療である事をご確認して置いて下さい。お子さんの反抗期等で大変な場合は、ご遠慮せずにご相談下さい。
以上が基本的な矯正治療の流れになりますが、歯並びの発育、矯正治療の進捗状況には個人差が大分あり、装置の種類、期間の変更がある事は、ご相談致しますのでご理解して下さい。
*態癖があります。→「うつ伏せ寝」
態癖があると、矯正が思わぬ方向に歯が移動する事や姿勢が悪くなる原因になります。改善する様に注意しましょう。(西村歯科医院でも指導致しますが、ご両親のご指導もお願い致します。)
鼻閉・アレルギー性鼻炎がある場合は、→お風呂、加湿器前の鼻呼吸練習をしましょう!
鼻腔の成長期が、6歳~10歳頃のため、鼻呼吸をすることによるバルーン(風船)効果が期待できます。積極的に鼻呼吸をしましょう。
(注意事項)
矯正装置は虫歯になり易いため、毎日のフッ素洗口や歯ブラシを指導しますので、一生懸命して下さい。そして、保護者の方の仕上げ磨きも大切です。また、虫歯になり易い食べ物・飲み物は、健康の面でも良くありません。控える様に、努力しましょう。
一緒に、むし歯の無い「お子さん」を育てましょう。