日々の診療の中でその特殊性から小児歯科(矯正)の難しさを痛感する事があります。それは医療従事者、保護者、患児の三者関係を良好に保たなければいけないからです。
保護者の方からは初診時に主訴や既往歴などの情報提供をして頂くのですが、それだけでは不十分なのです。医療従事者側からの情報提供が一方通行になってしまい、各家庭の生活背景を考慮しないものになってしまうからです。先ずはじっくり傾聴するという姿勢が重要です。
患児に対しても保護者から勧められた受動的な治療ではなく、能動的に治療に臨むためのバックアップが出来るようにしなけばいけません。西村歯科医院ではお口の中の清掃が終了した後のフッ素塗布では数種類のフレバーの中から好みの物を患児自身に選んでもらうようにしています。小さいことではありますが自分で選択するという行為は子供の自主性、積極性を養うことだと思います。
医療従事者は保護者と患児の行動変容の一環として、担当医がわざと突き放すよう対応をし、他のスタッフは同調せずに味方であるというアプローチをします。担当医も最後まで悪者ではなく、患児がよく出来たことはほめてあげると患児と保護者両方の心にプラスの感情を持って頂くことができるのです。それには医療従事者サイドのチームワークが必要とされます。
それでもまだまだ歯科治療は「怖い」や「緊張」といったマイナスイメージを持たれている方も少なくありません。私自身の体験でかなり以前ではありますが、お子さんに付き添いのお母さんが「ちゃんとやらないと先生に注射してもらうからね」とまるで脅すような言葉をかけているのを聞いたことがあります。
今思えば保護者の方の子供時代の歯科治療に対する「怖い」「痛い」という印象をそのまま自分のお子さんに与えていたのです。
逆に良い医療体験ができれば心にプラスのイメージが根付き大人になった時に自分のお子さんにそれを与えてあげられたと思うのです。
次の世代への良い循環を作ることはこれからの歯科医療に大きく貢献できることではないでしょうか。
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